投稿日:2021年3月22日
【SAPエンジニアがSAPコンサルタントとしてコンサルティングファームへ転職するために必要な3つのスキル】
はじめに
SIerを含むシステム開発会社で、SAPエンジニアとして活躍している方が、次のステップとしてコンサルティングファームへの転職を考えることはよくあることだと思います。
SAPエンジニアという立場では、どうしても携わることができる工程や領域が限定的になってしまうため、上流工程にてクライアントの経営課題や業務課題へアプローチできるコンサルティングファームへ転職するのは自然の流れでしょう。
しかし、SAPエンジニアとSAPコンサルタントの違いを正確に理解できている方は、意外と少なく、何となく経営課題を解決する仕事ができそうだからという考えから、コンサルティングファームを見ているという方も少なくないと思います。
そこで今回は、面接でもよく聞かれる「SAPエンジニアとSAPコンサルタントの違い」について説明させていただき、その上で、コンサルティングファームへ転職するために必要な3つのスキルについてお伝えしたいと思います。
SAPエンジニアとSAPコンサルタントの違いとは?
コンサルタントの仕事は、「企業の経営課題や業務課題をITで解決する仕事」と答える方が多いですが、これは半分正解であり、半分間違いです。
なぜならば、上流エンジニアの仕事も、システムを通して結果的に企業の経営課題や業務課題を解決することになるので、この答えではエンジニアとITコンサルタントの違いを正確に理解しているとは言えません。
では、ITコンサルタントとエンジニアの仕事の違いはどこにあるのでしょうか。
それは、潜在的な課題か、顕在化された課題のどちらにアプローチするかにあります。
ITコンサルタントの仕事は、クライアントですら把握していない潜在的な課題を顕在化させ、その課題に対して、システムを用いて最適解を企画・提案することです。
そして、そこである程度企画が固まった段階で、エンジニアがシステムやソフトウェアの要件定義を行います。
SAP導入に関しては、「SAPを導入することで業務を効率化したい」という課題を解決するのは、SAPエンジニアの仕事であり、そもそもSAPを導入するためにどのような業務課題があり、SAP導入に向けて何をどのように解決すべきなのかなどを考えていくのがSAPコンサルタントの仕事となります。
SAPエンジニアとSAPコンサルタントの業務範囲は明確に分かれてはいないので、必ずしもここで説明した役割が当てはまるわけではありませんが、SAPコンサルタントにはSAPエンジニアと違ったスキルが求められるというのは、想像がつくのではないでしょうか。
では、実際にSAPエンジニアがSAPコンサルタントへ転職するために必要となるスキルや、面接を突破するために必要になるポイントについて説明していきたいと思います。
SAPコンサルタントへキャリアアップするために必要な3つのスキル
転職先コンサルティングファームや役割によって求められる経験やスキルは変わってきますが、ここでは一般的にSAPエンジニアがSAPコンサルタントへキャリアアップするために必要な3つのスキルについてお伝えします。
1.特定領域に対する高い専門性
SAPコンサルタントは、顧客折衝経験が最も重視されると思われがちですが、それ以上に必要なのが、特定領域に対する高い専門性です。
ここで言う特定領域とは、製造、小売などの業種業界や、HR、FI/CO、SD/MM/PPなど、モジュールのことです。
なぜ、高い専門性が求められるのかと言うと、SAPは大企業の基幹系業務すべて(経理、財務、経営企画、販売・購買、生産管理、人事)を一元化する、広い領域をカバーするシステムのため、広く浅い知識では、顧客が抱える潜在的な課題を発見するだけでなく、何に困っているのかを理解することすら難しいでしょう。
クライアントのビジネスに対して、主体的かつ活発的な議論をしなければいけないので、例えば自動車業界のお客様と対峙する時には、自動車業界の業務知識が必要ですし、会計領域で困っているクライアントに対して提案する際には、当然のことながら会計知識が必要です。
クライアントとしては、ビジネスについて深い理解ができる専門家に頼りたいと思っています。
したがって、SAPコンサルタントへキャリアアップしたいのであれば、自分の専門領域について、自信を持っておかなければなりません。
ただし、ABAP開発が得意であるという人は、SAPコンサルタントとして活躍できる場が少なく、採用されることが難しいので、まずは何かしらの専門領域で中流~下流工程を経験してから挑戦したほうが良いでしょう。
2.仮説検証力
SAPコンサルタントに顧客折衝経験が必須であることは、何となく想像はできると思います。
お伝えしているように、SAPコンサルタントは顧客ですら把握していない課題に対して、様々な角度からヒアリングを行い、そしてクライアントが納得する解決策を提案しなければならないので、顧客折衝してきた経験が必要となります。
ただし、SAPコンサルタントに必要とされる顧客折衝スキルは、SAPエンジニアで必要とされるものとは少し違います。
上流SAPエンジニアでも、要件定義を行うための顧客折衝スキルが求められますが、SAPエンジニアの場合は、顕在化された課題をシステムに落とし込むことを目的とするため、クライアントの考えや導入したいシステムの詳細を深堀りするスキルが必要となります。
しかし、SAPコンサルタントは潜在的な課題にアプローチをするために、クライアントの悩みを深堀りしても、回答が出てこない可能性があります。
そこで必要となるのは、仮説を立てて自らが主導して課題を明らかにしていく、仮説検証力です。
SAPコンサルタントは、顧客が保有するデータや市場マーケット情報など、様々なデータを元に、ファクトベースで仮説を立てていき、「もしかしたらこういうことで困っているのではないか」「こういう課題を解決していけば困っていることが解消されるのではないか」と、予測を立てて顧客との折衝に臨む必要があります。
何もないゼロの状態から折衝を行うためには、この仮説を立てるというプロセスは必要不可欠であり、SAPコンサルタントとして活躍するためには必要となるスキルなのです。
したがって、SAPエンジニアとして顧客折衝を経験していない場合は、採用ハードルが高くなってしまいますので、SAPコンサルタントへステップアップするためには、顧客折衝できる案件を経験しておいたほうが良いでしょう。
また、既に顧客折衝を経験しているSAPエンジニアの方は、仮説を立てて検証するという習慣を身に付けておくことをお勧めします。
大手コンサルティングファームでは、仮説検証力を試すために、面接の中でケーススタディを出題することがあります。
ケーススタディとは、架空もしくは実際にあったビジネス課題に対して、解決策を提示するものであり、仮説検証力が備わっていないと回答することが困難になることがよくあります。
もし仮説検証力を養いたいということであれば、様々なケーススタディに挑戦しておくと良いでしょう。
3.相手に分かりやすく説明するスキル
先ほど、顧客折衝に必要なのは仮説検証力であるとお伝えしましたが、もう1つSAPコンサルタントとして活躍するために必要なスキルがあります。
それは、「相手に分かりやすく説明するスキル」です。
実はこのスキルを持っていないという理由によって、転職面接で不採用になってしまうケースがよくあるので注意してください。
なぜならば、クライアントは自社ビジネスにおいては精通しているものの、それ以外の領域については専門家ではないので、例えば小売業のお客様に対してAI技術を用いた需要予測システムについて専門用語を交えて話しても理解が追いつかないことが多いです。
SAPコンサルタントについても同様であり、SAP導入についてよく分からずに困っているにも関わらず、SAPに関する専門用語を頻繁に出して会話していては、話についていけなくなってしまいます。
難しい話ばかりをしてしまうと、クライアントには「よく分からなかった」という感想しか残らず、是非ともお願いしたいという状況にはならないので、SAPコンサルタントとして活躍するためには、注意しなければいけないポイントです。
転職面接でも同様で、面接官は皆さんの専門領域に精通しているかというと、そうではありません。
それにも関わらず、面接の中で専門用語ばかり出して話してしまうと、SAPコンサルタントとしての適性がないと判断されてしまう可能性がありますので、難しい言葉を相手の理解度に合わせて話せるように意識しておきましょう。
まとめ
今回の記事では、SAPエンジニアがSAPコンサルタントへステップアップするために必要な3つのスキルと、SAPエンジニアとSAPコンサルタントの違いについてお伝えさせていただきました。
コンサルティングファームで活躍したいと考えているSAPエンジニアの方は、是非とも今回紹介したスキルを身に付けると共に、SAPエンジニアとSAPコンサルタントの違いをしっかりと理解することで、SAPコンサルタントへのステップアップを実現していきましょう。