投稿日:2022年2月10日
【SAPコンサルタントとしてスペシャリストを目指すべきか、ゼネラリストを目指すべきか】
はじめに
SAPコンサルタントとしてのキャリアには様々な方向性があると思いますが、ひとつのキャリアの分岐点となるのが、スペシャリストとして専門性を高めていくか、ゼネラリストとして幅広い経験を積んでいくのかになります。
大手コンサルティングファームの多くはインダストリーやサービスごとに組織が分かれており、基本的には特定の領域に特化したSAPコンサルタントを目指すケースが多くなります。
その場合は、業界知識や業務知識をより深めていき、その領域に精通した専門家としてSAP導入に携わっていくことになります。
一方で、中小コンサルティングファームや一部の大手コンサルティングファームでは、どのインダストリーにも所属しないプール(Pool)組織と呼ばれるものも存在し、業界やサービスを限定することなく、案件ごとに様々なコンサルティングテーマに挑戦することができます。
その場合は、例えば製造業界の案件を経験したら、次は小売業界、その次は広告業界といったように、どの業界の案件にも対応できるようなSAPコンサルタントを目指していくことになります。
さて、ここで問題となってくるのは、キャリア形成の観点では、どちらの方向へ進むべきなのかということです。
結論からお伝えすると、専門性を高めるキャリアも、幅広い業界・業務知識を習得するキャリアも、どちらが良い悪いというのはありません。それぞれの方が市場では必要とされており、どちらのSAPコンサルタントのほうが優れているということもありません。
ただし、それぞれの方向性には当然のことながらメリットもあればデメリットも存在するため、将来的にどのようなSAPコンサルタントを目指したいかによって慎重に選択しなければいけません。
そこで今回の記事では、SAPコンサルタントとしてスペシャリストを目指すキャリアと、ゼネラリストを目指すキャリアのメリットとデメリットをお伝えしたいと思います。
それを踏まえ、是非とも今後のキャリア形成に役立てて頂けますと幸いです。
スペシャリストを目指すキャリアのメリット/デメリット
前提として改めてお伝えしたいのは、ここで言うスペシャリストとは、ABAP開発者になることではなく、あくまでも特定のインダストリーに強いSAPコンサルタントを目指すという意味ですので、ご注意いただければと思います。
冒頭にもお伝えしたように、大抵の大手コンサルティングファームでは、インダストリーやサービスごとに組織が分かれており、SAPコンサルタントとして転職した場合は、大抵の場合はどこか特定の領域に所属する可能性が高いです。
まず、スペシャリストを目指すキャリアのメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
【スペシャリストを目指すキャリアのメリット】
・クライアントの経営陣と、ビジネスに関する対等な会話ができるようになる
・所属インダストリーにおける経験値が積み重なり、高いパフォーマンスを発揮しやすい
・大規模案件やグローバル案件に挑戦する機会が増える可能性がある
・専門性の高さを武器に、将来的に事業会社の経営企画や事業企画への転職もしやすい
高い専門性を持っていると、より難易度が高い案件にも挑戦することができるようになるので、業界にインパクトを与えるような超大規模案件なんかにも参画できるチャンスがあります。
また、先のキャリアを考えると、そのインダストリーに関連した事業会社の経営企画や事業企画へ転職できるチャンスも高まります。
ただし、一見メリットが大きいようにも思えますが、次のようなデメリットも存在します。
【スペシャリストを目指すキャリアのデメリット】
・いくつかの案件を経験すると、同じことを繰り返していると感じてしまうことがある
・1つの案件だけで数年かかることもあり、新しいことへチャレンジしづらいことがある
・領域が限られるため、専門外の話については別のチームへ引き継がなければならない
実際に特定インダストリーで働いている方に話を聞くと、役職が上になればなるほど、「同じようなことを繰り返している気がする」と感じることがよくあるそうです。
また、自分が携わることができる領域が決まっているので、クライアントから自分の専門外の話が来た時は、別のインダストリーなどへその話を渡す必要が出てきます。
このように、スペシャリストを目指すにもメリットとデメリットがあるので、自分がどうなりたいのかはもちろんですが、クライアントに対してどのような形で貢献したいのかまでじっくりと考えて選択したほうが良いでしょう。
ゼネラリストを目指すキャリアのメリット/デメリット
ゼネラリストは、スペシャリストと比較すると、どうしても専門性の高さという点では引けを取ってしまうことがありますが、その一方でゼネラリストを目指すキャリアにも多くのメリットがあります。
【ゼネラリストを目指すキャリアのメリット】
・幅広い経験を積むことができるので、コンサルタントとしての提案の引き出しが増える
・他業界で得た経験や知見を、別の業界の案件で活かすことによって、全く新しい観点での提案ができるようになる
・案件ごとに業界やサービスが変わるので、毎回真新しい気持ちで業務を遂行できる
ゼネラリストの大きなメリットとなるのは、案件ごとに新しい課題を解決していくことになるので、コンサルタントとしての提案の引き出しが増えていくことにあります。
また、特にゼネラリストで面白いのが、全く関係の無い業界同士の経験を活かして、今までに無かったイノベーションを起こしていける可能性があることです。
例えば、最近では様々な業界が金融サービスを手掛けるようになっていますが、金融業界と製造業界を経験していると、そこで新たなサービスを生み出していける可能性があります。
一方でデメリットはというと、次のようなものが挙げられます。
【ゼネラリストを目指すキャリアのデメリット】
・一貫性の無い案件ばかりにアサインされてしまうと、強みとなる経験が身に着けられない
・経験次第では大手コンサルティングファームへ転職する際のハードルがやや高くなる
・クライアントの経営戦略、事業戦略に関して深いディスカッションができない
幅広く案件を経験できるメリットがある一方で、あまりにも広く浅くなりすぎてしまうと、これといったコンサルとしての強みを身に着けられないリスクも一定あります。
そうなってしまうと、インダストリーで組織が分かれている大手コンサルティングファームへ転職しようと考えた場合、それがリスクとなり採用ハードルが上がってしまうかもしれません。
また、専門性を身に着けているわけではないために、スペシャリストと比べると、クライアントの経営戦略や事業戦略に深く入り込めない可能性もあるのがデメリットと言えます。
まとめ
今回の記事でお伝えしてきたように、スペシャリスト、ゼネラリストのどちらを目指すのかは一長一短でもあり、どちらのほうに行くべきだと明言することはできません。
したがって、繰り返しになりますが、コンサルタントとしてどう成長していきたいのか、どうクライアントと接していきたいのかをしっかりと考え、どちらの道を進むべきかを検討していくことをお勧めします。